稲盛和夫氏と言えば、日本を代表する大企業である京セラやKDDIの創業、さらには日本航空の再建など、“経営の神様”として日本のみならず、中国の経営者や起業家らからも尊敬され、その死後もなお、日本やアジア、世界に影響を与え続けています。
稲盛氏には、現在の「京セラ」の前の会社名であった「京都セラミック株式会社」の名前にもあるように、『京都』や、同氏の出身地である『鹿児島』というイメージが強くあります。実際に、同氏は、未来の人財を育成するために、京都大学や鹿児島大学にも多大な寄付を行っています。
その一方で、同氏を”福岡の人財”の一人として挙げている理由は、九州大学に「稲盛財団記念館」を寄贈するなど、九州大学や福岡の地から“人類の未来と幸福”につながる貢献をしているからに他なりません。
なお、商業都市である福岡では、稲盛氏の教えが浸透し、それが「盛和塾」福岡支部となり、今は盛和塾の流れを受け継いだ「フィロソフィー経営実践塾」として、同氏の教えに救われた経営者らが中心となり、今なお福岡に脈づいています。
そうした稲盛氏の教えのポイントを挙げるとすると、人類の未来と幸福のために「正しく生きる」こと、そしてそのために「あきらめない」こと、だと言えます。
同氏の著書『生き方』などに、京都セラミック株式会社時代のエピソードが書かれています。当時の同社は、米国のIBM社からの商品受注に成功したものの、あまりにも求められる基準が高く、何度試してもセラミックの商品がそのレベルに到達できず、万策尽きたとして技術担当者が呆然と立ち尽くしていたと言います。
しかし、その担当者に対し、社長であった稲盛氏は慰労してあげることをせず、「神に祈ったのか?」と尋ねたそうです。その意味は、人事を尽くし、あとは天命を待つほかない、という基準まで本当にやり切ったのかを尋ねたかったそうです。
そのような超人的な努力を積み重ねた結果、京セラの商品は、世界に先駆けてIBM社の要求する基準を満たし、莫大な量の商品を期日までに納品できたとしています。
2008年、九州大学伊都キャンパスで行われた稲盛財団記念館の贈呈式に出席した稲盛氏は、「九州大学には京都賞や稲盛財団の運営で日頃からお世話になっており、人と技術の調和、心と技術の調和に貢献する研究機関設立を中心とする21世紀に向けた構想に共感した」と語っています。
パナソニックの創業者である松下幸之助氏とともに、”経営の神様”と称される稲盛和夫氏。同氏が実践した人類の未来と幸福のための「正しく・あきらめない生き方」は、九州大学を拠点として、福岡の地でも今なお実践され続けています。
(稲盛和夫の言葉) よい心がけを忘れず、もてる能力を発揮し、つねに情熱を傾けていく。それが人生に大きな果実をもたらす秘訣であり、人生を成功に導く王道なのです。なぜなら、それは宇宙の法則に沿った生き方であるからです。 (稲盛和夫著「生き方」より)
<関連する場所、および組織> 稲盛財団記念館(九州大学・伊都キャンパス) フィロソフィー経営実践塾